駐車場シェアサービス「akippa」の目指す地域を巻き込むビジョン

駐車場のシェアリングサービスとして今大注目のスタートアップ「akippa(あきっぱ)」の金谷社長と神戸市のスタートアップ支援担当である林による対談が実現!
スタートアップが自治体と連携する際に感じている課題、それらに対して神戸市としてはどう取り組んでいくのか、地域を巻き込んだakippaのビジョンなど語って頂きました。
聞き手 現在神戸市では様々なスタートアップ支援が行われていますね。
神戸市では2015年度よりスタートアップ支援拠点として、KOBE Startup Officeを開設しました。1〜3rd Batchまでで合計17のスタートアップが順調にビジネスを成長させ、資金調達にも成功しています。2016年にはシリコンバレーの500 Startupsと連携し、500 KOBE Pre-Acceleratorを実施しました。
そのような状況の中で、本年度は単なるスタートアップ支援だけではなく、行政ならではのスタートアップ支援のあり方を現在模索しています。
金谷社長 500 Startupsとの連携もそうですし、今年はInfinity Venture Summitが神戸で開催されたりと凄いですよね。
そういった神戸の動きを見ていて、神戸市さんであればスタートアップとしてアプローチできるかもしれないと、まさに今ちょうど、私たちakippaのサービスをご提案をさせて頂いております。
具体的に教えてもらってもよろしいですか?
金谷社長 はい、神戸市さんでもたくさんの駐車場や空いている土地をお持ちかと思います。そういった場所でakippaをご活用頂くことで、土地勘が無い方が神戸に行く際に、事前に予約し、安心して車で向かうことができる、遊びに来ることができるということを実現できればと思っています。

たとえば、JR西日本グループさんが大阪駅前に大阪ステーションシティの商業施設の駐車場を持っておられるのですが、従来は1Fから6Fまでしか運用されていなかった。なぜなら、7Fはほぼ利用されずに埋まらないからです。
そこで、7Fをakippaでご活用頂くこととなりました。いざ始まると、現在では7Fは土日が約8割埋まるまでになりました。にも関わらず、1Fから6Fはまったく集客が落ちていないんですね。どういうことかというと、7Fの車のナンバープレートを見ると、岡山や四国などの県外の車ばかり。事前に予約ができるという安心を提供することで、従来と違うお客さんを連れてくることができたわけです。
それは我々神戸市としても収入増という面で、非常に良いですね。

スタートアップが行政と連携する上での最大の課題

しかし、神戸市への初回アプローチの際はうまくいかなかったと聞いています。
金谷社長 実はいつもそうなのですが、スタートアップからすると役所側の窓口が全くわからないんですね…。一番最初に市営駐車場を管轄している部署等に行かせて頂いたのですが、正直理由もよくわからないまま話が進みませんでした。

我々はもともと営業マインドが強い会社なので、この部署がダメなら別の部署を当たろうと考えます。しかし、それほど営業マインドが無いテクノロジー系の会社だと、今回のような壁に当たった時点で諦めてしまうのではないかと。
果たしてこの部署の、この方に提案することが本当に合っているのかという、提案の内容や質とは全く別の部分が常に手探りな状態なんですね。
なるほど、最初の部署はうまくいかなかった結果、持ち前の営業力で、私の部署まで来られたわけですね。(笑)
金谷社長 はい、なんとかたどり着きました。(笑) 神戸市さんにはスタートアップについて理解のある、林さんのようながおられて非常にラッキーでした。そもそも自治体の中に、スタートアップに理解のある方がとても少ないんですね。
大企業の場合は、いわゆる経営企画のような部署があり、その方から大前提のコンセンサスを取った上で、適切な部署に繋いで頂けるケースが多いのですが。
金谷社長からお話を頂いた後、私から担当の部署へ連絡を取りました。すると、こちらの予想に反して、実は担当の部署としては、是非akippaを利用したい、と。ただ一つボトルネックとして、現在神戸市から駐車場管理の運営を委託している別業者との契約上、神戸市としては良いが、今のままだと業者側の利益が増えるという旨味がなく、難しいということでした。

自治体では、今回のケースのように、外部に大っぴらには出せない内部事情で止まってしまうケースが多いのではないかと感じています。

そこで、私からもう一歩踏み込んで、業者にも旨味を持たせる方法を考えてみましょう、という働きかけを行っています。

“自治体“ 神戸市ならではのスタートアップ支援

金谷社長 神戸市さんはかなり特殊ですよね。通常はそこで終わってしまうところを、神戸市さんはなぜそうなり得たのでしょうか?
確かに私も含めて行政の中では通常は、そこまで汗をかいてやろう、収入を何とか増やそうとは、残念ながらならないんですね…。

今回違うところがあるとすると、やはり私自身がスタートアップ支援をしているということが大きいですね。さらに言うと、これまでは特にテーマ性を持たせていませんでしたが、2017年から地域・社会課題を解決するビジネスを重点的に支援していく方向へ徐々にシフトできないかと検討しています。
akippaは地域のみんながハッピーになるビジネスだと感じたこと、また、今後神戸市としてどのようにスタートアップと関わることができるかというパイロット事例として、是非うまくいってほしいと思い、お手伝いさせて頂いています。
金谷社長 地域・社会課題解決という方向性はみなさんで話された結果なのでしょうか?
現在神戸市独自のアクセラレーションプログラムや500 Startupsとの連携プログラムなど実施していますが、まだまだ手探り状態でスタートアップ支援をやっています。国内ではどこか他自治体の真似をすればうまくいくなど、成功事例が無いくらいの取り組みなんですね。毎日あれがいいかなこれがいいかなと試行錯誤しています。
そんな中、海外のサンフランシスコで、行政課題にフォーカスしたスタートアップが生まれているのを知り、先ほどお話した方向性で模索してみようとなりました。
金谷社長 なんだかベンチャーみたいですね。
そうですね、本当に社内ベンチャーみたいな感じです。

そういう意味では、今回のakippaさんのケースに関しては、道路や住宅の担当部署等の関わりが深いかと思いますが、スタートアップの業種は多岐に渡るので、役所も色んな部署がスタートアップに関わるようになってほしいですね。
最終的に役所全体の頭を柔らかくしていくことができれば、各部署の小さな動きが積み重なって、本当に大きな動きになるんだろうなあと。そういった取り組みの第一歩、とても大事なきっかけとケースを頂けたのかなと、私も勉強をさせて頂いています。

スタートアップが地域を巻き込むために必要なこと

今回のように色々苦労があるなか、akippaさんがわざわざ神戸市へご提案を頂いたのは、具体的にどういったところがメリットと感じておられますか?
金谷社長 やはりお墨付きみたいなところが大きいですね。ユーザーさんもakippaを使う際に、神戸市さんが駐車場を貸していることが分かると、安心して駐車場を借りることができる。また、神戸市さんが貸しているとなると、今まで躊躇していた神戸市近辺の住民のみなさんも安心して駐車場を貸して頂けると考えています。
スタートアップ支援をさせて頂いていて、それは多くの方がおっしゃってくださいますね。金融機関さんとの話や顧客開拓の際に役に立つと。そういう意味では、うまく市の名前も利用してもらいながら、成長してもらって、またそれが地域に還元されれば、市としてはとてもうれしいですね。
金谷社長 と同時に、本質は名前をお借りすることとは別にあると考えています。akippaは出かける時、目的地が決まっている際しか今は閲覧されません。そうではなくて、普段から来週末どこに行こうかなという時に、akippaを見て頂きたいんです。

たとえば、akippaで神戸の魅力的な観光地一覧を見ることができれば、「神戸にこんな場所があるなら神戸へ行ってみよう」と思って頂くことができます。そしてakippaに貸し出して頂いた神戸周辺の駐車場を検索し、ユーザー様が事前に予約をする。
神戸市に行くから停めたいじゃなくて、面白そうだから神戸市に行きたいという行き先まで決定できるサービスにしていきたいと考えています。
なるほど、そのビジョンはすごくいいですね。街の魅力も高めることができる取り組みをakippaさんがやってくださると。行政も観光素材とか、観光事業とか、見せ方はさておき情報だけはたくさん持っていますし、是非ご活用頂きたいですね。
金谷社長 akippaを土日に開くとなると、基本的にはほぼおでかけが目的となります。その人達に、もっと適切に街の魅力を提供していきたい。そういった意味で、名前をお借りすることとは別に、市を中心に、民間の企業や市民の方も含めて一緒に取り組んでいくことができる、街自体を盛り上げることにつながる、かなり面白い事業になると考えています。
面白いですね。その火付け役として、自治体としての神戸市がお役に立てるのであれば、ぜひ一緒に実現したいですね。今後ともよろしくお願いいたします。
akippa株式会社 金谷元気
1984年生まれ。akippa株式会社 代表取締役社長。大阪大学 経済学研究科 非常勤講師。高校卒業後より4年間、Jリーガーを目指し関西リーグなどでプレー。引退後に上場企業にて2年間営業を経験し、2009年2月に24歳で1人暮らしをしていたワンルームの部屋で会社設立。契約されていない月極駐車場や、個人宅の駐車場を15分単位で貸借りできる駐車場シェアサービス「akippa」を運営。DeNA、グロービス、トリドール、朝日放送、三菱UFJキャピタルなどから総額12億円以上の資金調達を実施している。2016年12月にはトヨタ自動車と提携し出資も受けた。

神戸市 医療・新産業本部 新産業創造担当 林順子
2001年、大学卒業後、民間企業へ就職。2008年、神戸市役所入庁。2015年よりスタートアップ支援に携わる。

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